初心者でもスピーカーのスペック表示から読み取りたいいくつかのポイント
スピーカーのスペック表(スペックシート)には、購入前に必ず押さえておかないといけない数値と、それほど気にする必要のない数値があります。まず最初にスペック表の見かた、読みかたを知っておくことがかんじんです。でも実際はとても簡単なんですよ。
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スペックとは性能表示です
スペック(spec.)とは工業製品の性能を数値で表示した値のことです。スペック表を見ることで、その商品がどんな特徴を持ち、他の商品とどこが異なっているのかをある程度把握することができます。
スピーカーに関しても、メーカーの製品ページや販売サイトの商品ページに行けば必ずスペック表示がされています。「spec」とか「仕様表」といったタイトルのページです。
見慣れない単位や数字が並んでいますが、家庭での一般的な使い方においてチェックしておくべきことは以下の項目になります。
まずは寸法チェック
置けるかどうかが最初の一歩
ネット通販で買ってみると写真で見たイメージより案外大きかったということがよくあります。製品によって大きさは様々。基本的なことですが、無用な失敗を避けるためにもサイズはあらかじめ確認しておきましょう。
製品ページには前方からの写真は必ずありますが、横から見た写真はほとんどありませんので、出窓や机の上に置く予定の方は、特に奥行きのサイズに注意が必要です。奥行きの深いスピーカーは近年増えている傾向のように感じます。またスピーカーの背後には、ケーブル接続のための余裕も見ておく必要があります。
トールボーイスピーカーについては、音質評価に気を取られて、椅子やソファに座った高さやテレビの高さとマッチするかどうかのチェックをつい忘れがち。実際の製品の高さは本当にそれぞれなので、ここはよく注意してください。
スピーカーのサイズと音質の関係
一般的に大型のスピーカーになればなるほど、ウーファーユニットの口径を大きくすることができ、筐体の容量も稼ぐことができて、楽に低音を出すことができます。ユニットの数や配置にも余裕が生まれ、設計の上でも妥協を少なくすることができます。
しかし大きく作ると高音質になるのかというと必ずしもそうではないのが、スピーカーの面白いところです。同じメーカーの同じシリーズでも、小さいほうが高評価を得ているということもしばしばあります。「上位機種」という響きにとらわれ過ぎないようにしましょう。
能率と許容入力
能率(最大音圧レベル)/dB
能率は、ある一定のパワーを入力したときに、そのスピーカーからどれだけ大きな音が出るかを示す単位です。スピーカーの敏感さと言い換えることもできます。dB(デシベル)で表示されているのがその数値。当ブログでは「最大音圧レベル」と表示しています。
現代では、80dB前半から90dB前半あたりに多くのスピーカーが収まります。もっとも多いのは80dB後半あたりになります。またこの数値はウーファーの直径や筐体の容積といった要素によって制限されるので、小さなスピーカーほど能率も小さくなる傾向があります。
この数値が大きい(=能率が高い)ほど小さな入力で大きな音を出すことができますが、能率の高いスピーカーはそのぶんアンプの持つ「あら」の部分も拡大してしまうといった側面もあります。数字の大小は優劣ではなく、設計のコンセプトの違いととらえましょう。能率の低いスピーカーはアンプしだいで本来の能力を発揮することも多く、そこがオーディオの難しいところであり、また楽しく奥深いところでもあります。
この数値は実際の現場においては、「このスピーカーは能率が98dBもあるのか。なら出力の小さな真空管アンプでもよく鳴ってくれそうだな」とか、「82dBか。じゃあ駆動力のあるアンプにつなげたいな」という感じでスピーカー選びに関わってきます。
許容入力(最大入力)
アンプからスピーカーに、どれだけ大きなパワーまで入力していいか、という数字です。許容入力を超えるパワーをスピーカーに送り込むと故障の恐れも出てくるというので、この数値に惑わされるライトユーザーも多いです。
ただ一般的なスピーカーの場合、多くの機種で数十Wから100W超という設計になっていますが、家を揺るがすようなかなりの大音量でも、その出力はせいぜい10W程度と言われています。安全マージンの上限が極めて高いので、このW数が必要以上に多くてもその性能を発揮する場面はほとんどありませんし、数字が大きければエライとかすごいとかいうこともありません。
一般的に、能率の低いスピーカーはパワーを入れてやらないとしっかり鳴らないので、許容入力も高めに設計されている傾向もあるように思います。しかしいずれにしてもかなりの余裕を持った数字なので、一般的に家庭で使うぶんにはそれほど気にする必要はありません。
リアバスレフとフロントバスレフ
スピーカーには、ユニットそのものとは別に、ユニットの前後の動きを利用して低音を増幅するためのポート(バスレフポート)を持っている製品が多くあります。これは必ずしもスペック表に載っているとは限りませんが、製品画像でも、単なる「穴」が開いていることを確認できると思います。
例としてこのページの製品画像をご覧ください。穴の形状は丸のことも四角のこともあり、バスレフスリットと呼ばれることもあります。
バスレフポートはスピーカーの背面か前面にあることがほとんどですが、特に背面にあるリアバスレフの場合は、その低音の響きが背後の壁によって反射して、音楽の低域が膨らみ過ぎないようにすることが必要です。
設置スペースの背後に空間が取れず、低音が膨らむことがあらかじめ予想される場合には、フロントバスレフの製品を検討することも必要です。ただこのあたりは、必要に応じて穴を塞ぐこともできますし、あえて壁を利用して低音を増強する方法もあるように、人それぞれの判断になっています。また低音は回りこむ性質が大きく、フロントバスレフにしたからといって周囲の影響をゼロにすることはできませんので、やはり個々のユーザーの考え方しだいということになります。
インピーダンスについて
真空管アンプの時だけ注意
ほとんどの場合問題になることはないので当ブログでは表示していませんが、スピーカーの持つ電気的な抵抗値がΩ(オーム)で表示されています。これをインピーダンスといい、アンプやCDコンポのスペック表にも載っています。
この数値は、スピーカーを真空管アンプと組み合わせる場合に限って注意が必要です。
真空管アンプにつなげる場合に限り、アンプに表示されている推奨インピーダンス数値よりもスピーカーのインピーダンスの数値が大きくなるようにしてください。
これが逆になるとアンプに負荷がかかってしまい、故障の原因になる可能性があります(実際にはいくらかの余裕はあるようですが)。インピーダンスの数値が同じであればもちろん全く問題ありません。アンプのΩ≦スピーカーのΩです。
「ビギナーだけど真空管アンプを使いたい!」という人はこの点に注意してスピーカーを選んでくださいね。真空管アンプ以外の半導体(トランジスタ)アンプやデジタルアンプにつなげる場合は、実用上、この数値を気にする必要はありません。ただ数字をそろえると理想的ですし、気分もいいですね。
あとはアンプの一組の端子に2組のスピーカーを並列につなぐなど、メーカーが想定しない接続は行わないで下さい。抵抗値が変わって事故のもとになります。
品名に色を示す文字が付いていることがある
スピーカーの名称に、カラーバリエーションを示すコードが付いていることがあります。たとえばSTUDIO230とSTUDIO230BRNは同一の製品になります。
- STUDIO230BRN←この部分
- SC-M39CWEM←この部分
※1色しかラインナップしていないスピーカーでも、このように品番に色を示すコードが付いていることがあります。
その他の数値をさらっと説明
周波数特性または再生周波数帯域
○○Hz(ヘルツ)から○○KHz(キロヘルツ)というように表記されます。下の数字が40Hzを切っていれば低音からよく出る、上が30KHz程度より高ければ高音まで出るなどと一応考えてもいいのですが、実際の音質はこうした数値に関わらず千差万別です。
ユニット数
ユニットの数が多いほど高性能ともいえませんし、少ないスピーカーより高音質とも限りません。
クロスオーバー周波数
高音と低音を担当するユニットがどのあたりの周波数帯で重なり合っているかを示します。これを見てスピーカーの音質や設計意図の見当がついたら確実に中級者以上ですが、数多くのスピーカーを聴く経験を積んだ上で比較しないと見えてこない領域です。私(管理人iG)は音を聴いたあとにスペックを見て「なるほどね」と思うこともありますが、スピーカーを選んだり評価するに当たっては、全く気にしていません。
ここに簡単に列挙した項目は、チェックすべき項目というよりは、むしろ必要以上に惑わされてはいけない数値になります。こうした数値よりは、聴感上の印象のほうが遥かに大切です。失敗したくないと考える初心者ほど再生周波数帯域などにこだわってしまいますし、メーカーもそれを見越して無闇に数字を競ったり大きくサイトに掲げたりするような傾向もありますが、実は音さえ聴いて納得できれば、全く見なくてもかまわないくらいの数値です。
特別な用途に関わる数値
スピーカーには特定の用途で使われる、使用環境を特化したような製品も存在します。浴室用やアウトドア用のスピーカーもそのひとつです。
その場合は防塵・防水性能やバッテリーの持続時間もチェックすべき項目です。毎日持ち運びたいポータブルタイプの製品の場合は、サイズのほかに重量も見ておきましょう。
スペック表の見かたのまとめ
ポイントを押さえていればスペック表は難しくない
スピーカー単体での購入に際して気になるのが、手持ちの機器、特にアンプ性能とのマッチングです。当ブログでは、主な読者層としてオーディオビギナーの方を想定しています。従って、取り扱いに知識や経験を要するような製品の紹介は原則として避け、「広めの中道」くらいの方向性でやっていこうと考えています。ですので「難しいスピーカー」を紹介することはないだろうと思います。
多少なりともアンプを選ぶタイプのスピーカーに関しては、紹介文の中でその点にも触れていますのでご安心ください。
見てきたように、スピーカーを選ぶときには、実際のところは能率と、バスレフの場合のポート位置を確認しておくくらいで、基本的には設置する場所とサイズにだけ注意していればいいということになります。また、現在流通しているほぼすべてのミニコンポやレシーバーには、半導体またはデジタルアンプが使われていて真空管は使われてないので、インピーダンスに関しては心配しなくても大丈夫です。あとは思う存分、追求したい音質の好みを基準にして選んでいきましょう。
スピーカーのメーカーごとの特徴を知ったうえで、機種ごとの音質の特徴を表現した『音質アイコン』も、あなたの最高のスピーカー選びのためにどうぞお役立てください。(iG)
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