スピーカーの足回りを固めて低音を制御しよう

このページは初心者むけに書いた、スピーカーの低音が出すぎるとき試したいことと、その手順(1/2)の続きの記事です。

 足回り
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床や台の共鳴を低減する

床やスピーカーを乗せている台が、低音を増幅させている場合があります。テレビラックなどに直接乗せていたりすると、ボリュームしだいでかなり低域が膨らみます。

意外なところでは、出窓も低音を増幅させることがあります。壁の中が空間になっているタイプの出窓に置いている場合は、とくにそうなりがちです。

スピーカーの設置場所を変更できればいいですが、それができない場合でも、足回りの見直しとカーテンなどによる反射音の低減で対策していくことができます。


1. しっかりした床や台の上に置く

効果:中~大

これは設置の基本です。ブックシェルフスピーカーは本来しっかりしたスタンドに置くことでメーカーの意図する本来の性能を発揮することができます。呼び名こそブックシェルフですが、下手に本棚に入れたりしてしまうと、棚板や背板が思いっきり反響して音を乱すことになりかねません。


スタンドがない場合もスピーカーはなるべく安定した場所に設置しましょう。これはデスクトップで使う時にも考慮してほしい大切な要素です。

ここから先は「多少の」お金のかかる方法になります。


2. インシュレーターを敷く

効果:中~大

あなたに使わせるお金とは、10円玉6枚です。

…そうですか予想通りでしたか(^^

その10円玉を、片側のスピーカーの下、前部のコーナーには1枚ずつ、後ろの辺の内側中央に1枚、計3枚敷いてみましょう。実際に音楽をかけながらのほうがいいですね。反対側も同じように3枚敷きます。

すると最初に高音部分、例えばシンバルの音などがはっきりするのがわかると思います。そしてよく聴いてみると低音の濁ってうるさい感じも低減しているはずです。

こういう感じのことを、オーディオファンは「低音が締まる」というふうに表現します。10円玉6枚で意外と変わるものですね。こんなふうにもっと低音を締めていきましょう。

こうやってスピーカーの下に置いて制震を図ったり安定させたりする物品をインシュレーターといいます。これは専用の製品として売られてもいますし、また、いろんなもので代用することで事足りることもあります。

硬貨の場合は10円玉に限ることはないのですが、素材がいいのでしょうか、昔から基本はまず10円ということになっています。複数枚を重ねる場合は、両面テープをはさむようにして接着して、使っているうちに硬貨がずれないようにします。


しかしなぜ前後3点支持なのでしょう?
それは、意外に少なくないことですが設置場所が完全に平坦でない場合、四隅で支える4点支持よりも3点で支えたほうがガタつくことがないからです。

ではなぜ前が2つで後ろが1つなのか?
それはきっとスピーカーは前のほうが重いからなんでしょう。「後ろに2点のほうが好みの音がした」という意見も読んだことがあります。このへんは自由に試してみたほうがいいことですね。


インシュレーターは一般的に、金属など硬質の素材だと高音を際立たせ、木材など柔らかめの素材は音も柔らかくしてくれる傾向にあります。しかし接地面積を減らすことで床や台への直接的な振動の伝達を減らしてくれることは、インシュレーターに共通する効果です。

100均で見つかる耐震マット、耐震ジェル、コルクマット、接着して使うような硬質のゴム足、こうしたものが代用になるでしょう。

低音の量感の大きいトールボーイスピーカーのなかには、床への振動伝達を最小限にしてがっちり抑え込むタイプの、尖ったスパイクとスパイク受けのついたフットが付属しているものも多くあります。スパイクがないトールボーイにインシュレーターを試してみたい場合は、重心が高いですので4点支持にしたほうが安定します。

インシュレーターはトールボーイよりはブックシェルフに向いているのではないかと思いますが、もちろんトールボーイに使用しても効果はありますし、後述するオーディオボードを併用するとその効果はかなり高くなります。


低音制御に効果の高いオーディオテクニカやその他のインシュレーターの紹介記事です。




3. オーディオボード、制振シートを利用する

効果:大

スピーカーを十分な厚みのある板の上に置くことによって、床への振動エネルギーの伝達を収束させたり、低減させる効果があります。

こうした意図のもとに素材や内部構造を工夫されたものが、オーディオボード/スピーカーボードとして製品化されて販売されています。おそらくあなたもご覧になったことがあると思います。あれは「なんとなく」「飾りで」床とスピーカーの間に敷いてあるものではありません。

オーディオボードは、トールボーイにもブックシェルフにも、また各オーディオ機器本体にも使え、不要な振動の低減にきわめて大きな効果があります。オーディオボードと床の間に、ソルボセインなどの素材の制振シートを敷くこともあり、さらに高い効果が見込めます。

オーディオボードの素材は、木材や大理石などが代表的です。しかしあまり薄いと振動エネルギーを十分減衰させることができず、思ったような効果がないことがあります。木材でも石材でも、トールボーイを載せるなら3~4cm程度の厚みは欲しいところです。


一般的な大理石のオーディオボード入手先の一例をこちらの記事で紹介しています。




ケーブルを替えてみる

効果:小~(まちまち)

スピーカーケーブルや機器の電源ケーブルを替えることで、低音に限らず音をコントロールすることができる…かもしれません。

正直なところ私にはよくわかりません。しかし多くの方がケーブルチューンをほどこして、出力される音に変化を与えているのは事実です。

私(iG)自身は、購入時にスピーカーケーブルを選ぶ時には見た目も重視しますが、実際その「音質」の評価も参考にしながら決めています。個々のケーブルがそれぞれある種の性格を持っているということは、趣味の世界の集合知として尊重しています。

しかし最初にこれと決めて接続したケーブル類に関しては、もうずっとそのままにしておきたいと考える人間です。このような態度も、広い意味での「趣味」のひとつの表れだろうと思っています。

だから私には「どのケーブルに変えるとこういう効果があるよ」というアドバイスは、残念ながら今のところできません。

でも、今後気まぐれにでも替えてみたら、ああなるほどたしかに変わったな、と感じるのかもしれませんね。「スピーカーケーブル 音質」で検索していろいろ読むと、参考にできる記事がたくさん見つかります(^^;


アンプで最終的な調整をする

効果:小~大

さあ、最後にもう一度アンプ側で調整をおこないましょう。

これをなぜ最後に持ってきたかというと、やはり大元に近いところを変えてしまうと、多様な音楽(に加えてテレビ、映画、ゲーム)のソースに対応するために必要なバランスが、多少なりとも変わってくると思うからです。基本は環境の見直しと足回りの改善だと考えてください。

ここが最小限の調整で済めば、もっともバランスのいい低音制御になっているはずです。今後の音楽鑑賞や各種ソースへの対応に余裕が残りますし、その都度のトーンコントロール幅も少なくて済みます。

とくにAVアンプの場合はイコライジングパネルを使って細かい音域ごとにレベル調整ができるものも多いですので、がんばって追い込んでみてください。


できることからやってみる

低音の制御についてささっと書くつもりが2ページにもなってしまいました。長くなってしまいましたが、ひとつひとつは基本的なことばかりです。

「低音が出すぎる」というのは考えてみれば贅沢な悩みですが、「低音が出ない」よりはずっと対処のしようがある問題ですので、ここまで読んできた方は自分にできそうなことからでもぜひ試してみてください。お役に立てれば幸いです。お疲れ様でした。(iG)


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