澄んだ音を求める人におすすめのBS192
音質レビュー
音が磨かれている
ELAC(エラック)はドイツの音響機器メーカー。「静謐」とまで称される美しい高域へのこだわりで存在感を示しています。それだけに、JET V Exツィーターの透明感ある高音がどこまでも伸びていく様は一聴の価値がありますよ。
その無駄をそぎ落とした美しい工業デザインから来るイメージに反して、音は決して寒色系ではないと感じます。同じ素材、例えば木材でも、サンディングや磨きによる表面の微細な凹凸の有無で触れた時の温度感が少し変わりますが、ある程度それと同じような効果が現れているように思います。
とにかく実物を聴いてから
ELACのスピーカーについては、モデルチェンジのサイクルが早いのか、特にブックシェルフの数が多いような印象があります。なにも全部聴くと決めているわけではないのですが、試聴もなかなか手が回りません。
事前は世評とその外見から漠然と、テクノ系にはいいだろうと考えていましたが、過去にBS310でクラリネットを含むカルテットを聴かせてもらって以来、案に相違してリード楽器にもよくはまるメーカーだという印象を持っています。BS310は、どこか土臭くもありながら、音階が上昇していくにつれて胸が切なくなっていくような、クラリネットの音色の哀感や透明感をよく表現していました。アルトやソプラノサックスにもよくマッチするのではないかと思います。
とは言え、テクノ系を最も気持ちよく聴けるスピーカーのひとつであろうという印象も未だに崩れていません。人工音もリード楽器も、ということになると、単純に足し算でフュージョン系にはぴったりだろう、と推測します。お好きな方はぜひELACも試聴の対象に入れてみてください。
比較したい機種は?
その時々のELACがある
ELACの音が好きな人は、あまり他のメーカーに浮気をしないで代々ELACを聴き続ける傾向があるように思います。好きな人にはとことん好かれる、また音にも見た目にも、それだけ個性的な魅力のあるメーカーです。
いま同社の製品からBS192の比較対象を選ぶとするなら、MEISTER EDITIONのような派生モデルを除けば、ひとつ上位の機種にあたるBS263ということになります。
BS263はELACらしからぬラウンドしたボディで(おそらく初めて?)登場してきて、デザイン面での局面の移り変わりを感じさせるモデルです。そういえばBS403も、木目の外装をまとって現れていますね。しかしウーファーの幾何学的な造形などは、今も「これこそELAC」というメカニカルな印象を与えてくれます。
音に関しても、これまではややもするとボワつく低域を締めるためにピンポイントの設置が求められていたところがありましたが、そんな欠点の部分も改善していく方向で洗練されていて、従来のファンからの評価も上々のようです。
メーカー全体として、一部の好事家に向けた尖った製品から、時代が進むにつれて多くのユーザーに受け入れられる方向にシフトしているようにも感じられます。ここ数年はとくにそんなことを感じます。
ステップアップには思い切りと自制が必要
更なるステップアップ候補としては他に、メーカーの看板モデルと言えそうな300LINEのBS312もあります。私が聴いたことのある310よりも、やはりセッティングでの気難しい部分が消えて扱いが易しくなっているそうで、いつか聴いてみたいと思っています。300LINEはアルミボディというところもいいですし、メタリックな質感もやはり魅力的。一段階予算を上げると次の魅力的なモデルが見えてくるというところは、同じドイツの高級車メーカーの戦略と似ていますね。
改良に改良を重ねているここ数年の流れを見ても、そのドイツの高級スポーツカーのように、「最新のELACが最良のELAC」と考えていいと思います。その時々に売っている同社製品を複数試聴して決めることができればベストです。
ただ高めの機種を選んだ場合には、きっとその分いいアンプも欲しくなるでしょうね。そこで思い切って一段階上に行っちゃうか、落ち着いてほどほどのところでまとめるかも悩みどころですが、迷ったらドイツ人になったつもりで合理的判断を下しましょう。思い切りも自制心も、どちらも大事です。
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